ソフトバンクの技術者が退職し、同業他社である楽天モバイルに転職するに際して、「5Gネットワーク」に関する営業秘密情報を社外に持ち出したことが、ソフトバンクの社内調査により判明し、令和3年1月12日、当該技術者が不正競争防止法違反の容疑にて逮捕された、との報道がなされています。
今後、ソフトバンクは、楽天モバイルに対して、当該営業秘密情報の利用停止や廃棄等を求めるべく民事訴訟を提起する予定であると公表しています。
また、一部報道によりますと、情報漏洩の手口は、ソフトバンク在籍最終日に社内サーバーに遠隔ログインした上で、営業秘密情報をメールに添付して社外に送信するというものであったとのことです。
当該情報漏洩行為を適宜に発見し、迅速に捜査機関への通報等のアクションを講じた点については、評価できます。
しかしながら、退職の予定のある者が社内の重要情報にアクセスできる状態であった点や、当該情報をメールに添付して送信するといういわば古典的な手口で漏洩することが可能であったという点からすれば、同社のセキュリティシステムの在り方には改善の余地があったのかもしれません。
昨今、弊所への相談・依頼の限りでも、内部者(特に退職予定者)による、ライバル企業への情報漏洩事件は間違いなく増加傾向にあります。
情報が紙ではなくデータで管理されるようになったことにより、情報漏洩が容易になったことがその背景にあるものと思われます。
当職らが担当した案件の中でも、漏洩行為に関与した人物について、刑事告訴を行い、有罪の判断を得ることに成功した事案や、情報漏洩に関与したと思われるライバル企業に対して現在民事訴訟を提起している案件もあります。
そうした案件に携わる中で思うのは、やはり、情報漏洩の未然防止、早期発見の重要性です。
そのためには、社内のセキュリティシステムやセキュリティポリシーの見直し、従業員教育、従業員との間での秘密保持等に関する契約が非常に有効かつ重要な手段であるといえます。
情報漏洩は、一たび発生した場合には、取り返しのつかない損害を生じさせることもあります。
皆様の会社での対策が十分なものか、改めてご検討いただくことを強くお勧めいたします。
弁護士 坂本龍亮