本日、大塚家具の株主総会が開かれました。本総会においては、取締役・監査役選任議案について、娘である大塚久美子社長側の会社提案議案と、父である大塚勝久氏側の株主提案議案が真っ向からぶつかり、激しい委任状合戦(proxy fight)の結果、久美子氏側が61%の賛成票を集め勝利しました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150327/k10010029771000.html
久美子氏側が勝利した理由としては、議決権行使助言会社であるISS社やグラスルイス社の支持を取り付けるなど、機関投資家からの賛成票を得たことによるものと思われます。事業計画の中身はもちろんのこと、取締役10名中社外取締役を過半数の6名とするなど、時流に合わせた提案が功を奏したのではないでしょうか。
久美子氏側の取締役選任議案が可決されたことにより、勝久氏は取締役から外れることになり、久美子氏側の体制が固められました。
もっとも、勝久氏が2割弱を占める大株主であることは変わらず、今後の経営状況によっては、父娘間の紛争が再燃する可能性も十分あります。勝久氏の記者会見に同席した幹部社員達も、多くは会社を去らざるを得ないでしょう。本件は、父から娘への事業承継が失敗したため、企業価値が大きく毀損された事例といえます。
大塚家具のお家騒動は、父が築いた会員制の高級路線を、低価格路線のIKEAやニトリの台頭に危機感を覚えた娘が路線変更に舵を切ったために生じたと報道されています。
経営方針の違いによる世代間対立(世代の違いによる経営方針の対立という方が正確なのかも知れません。)というのはしばしば見受けられることであって、大塚家具の例が特段珍しいわけではありません。一般の消費者に知名度の高い上場企業が舞台であったため、これほどの注目を浴びているだけです。
私は弁護士ですので、どちらの経営方針が正しいのかを正確に判断する能力はありません。ただし、経営を完全に託すつもりがないのであれば、経営権はしっかりと握っておくべきとは断言できます。未だ枯れていないにもかかわらず、後継者に株式の多くを譲ってしまい、後悔されている例は何度か見たことがあります。勝久氏の立場とすれば、ききょう企画の支配権を久美子氏に掌握されたことにつき忸怩たる思いでしょう。
上場会社ならいざ知らず非上場会社であれば、会社経営に色気がある間は、種類株式の発行や株主間契約などで自らの立場を保持しておくことを強くお勧めいたします。
今回の大塚家具のお家騒動は、会社法的にも興味深いものです。
会社法改正で事実上義務化されたとさえいわれる社外取締役が、取締役10名のうち6名を占めていることは、社外取締役の複数選任の流れを強めることになるのかもしれません。
また、会社側が『コーポレートガバナンス・ガバナンスコードに対する当社の考え方と第44回定時株主総会における議決権行使のお願い』とのニュースリリースを行っており、またその中で、コーポレートガバナンス・ガバナンスコードだけでなく、スチュワードシップ・コードにも言及している点、新しさを感じました。