2 手続の概要
一般的なデューデリジェンス手続の流れは以下のとおりです。
(1)実施計画の策定
まず、買い手はデューデリジェンスの実施計画を策定します。
実施計画策定にあたっての必要な決定事項としては、①デューデリジェンスを実施する対象分野の決定、②デューデリジェンスの重点事項の検討、③デューデリジェンス実施チームの組成、④デューデリジェンス実施方法の決定、⑤現地調査等のデューデリジェンス実施スケジュールの決定等があります。
当事務所では、依頼者の皆様のM&Aの目的、ご予算、懸念事項、クロージングの希望日や対象会社の事前開示資料等に応じた、効率的なデューデリジェンス実施計画の策定も承っております。
(2)資料の開示請求
次に、対象会社に対し、対象会社の業種や特性、重点事項を考慮して、各資料の開示請求を行います。
この際、早期に資料を入手するために、担当者が開示を求められている資料が何か理解できるよう資料についての説明を加えることもあります。
また、同様の理由で、提出を求める資料が膨大な場合は、優先順位を付して、準備が調った資料から順次開示を求めることも有効です。
提供された資料を検討し、確認すべき点については対象会社に対し質問します。また、資料の検討結果または新たに存在が明らかになった事項、資料については、追加で開示を求め、更に質問することになります。
(3)インタビュー
デューデリジェンスにおいては、対象会社の役員または従業員に対して直接インタビューを行うことが一般的です。代表者等経営陣に対するインタビューを特にマネジメント・インタビューといいます。
インタビューの対象は、売り手の秘密保持の観点等から、買い手の希望どおり叶うとは限りませんが、十分なデューデリジェンスを実施するためには希望を明確に主張することが肝要です。
インタビューは、資料が存在しない分野、資料だけでは判然としない事由、資料と異なる運用などについて確認できる貴重な機会であるため、インタビュー実施までに開示された資料の検討をして、確認すべき事項に漏れがないように質問事項リストを作成する等して十分準備します。
一方、インタビューにおいては、対象会社担当者等との関係で敵対的にならないよう十分に留意する必要があります。対象会社担当者がデューデリジェンスに対し非協力的な場合には、デューデリジェンスの意義を十分に説明し、決して「あら探し」をしているのではないことを理解してもらうことが重要です。
当事務所では、インタビュー実施前に、依頼者の皆様から事前にお伺いしたM&Aの目的、懸念事項等から想定される重要ポイントを押さえ、その後の契約締結を見据えた質問事項をリスト化し、効率的なインタビューの実施を行っております。
また、実効性あるデューデリジェンス実施の観点から、可能な限り他のデューデリジェンスチーム(公認会計士等)によるインタビューにも同席するよう心掛けております。
(4)最終報告
弁護士は、通常、追加調査や検討を経て、法的分析の結果などを記した最終報告書を作成します。ご要望に応じて報告会を開催することもあります。
最終報告書が大部になる場合には、要点をまとめたサマリーを作成することもあります。
当事務所では、法務デューデリジェンスチームと財務デューデリジェンスチームが、互いの最終報告書を相互に確認し、報告会に同席するよう心掛けています。
これは、スキーム変更の検討が必要となった場合に、両チームの意見が重要となり、また、最終契約書を作成する弁護士にとっては財務デューデリジェンスで発見された問題点及び財務チームが検討した対応策を認識することが必要不可欠だからです。
<続く>
M&A(買い手側)の基礎知識③-弁護士が関わるM&A手続の概要Ⅰ
M&A(買い手側)の基礎知識④-弁護士が関わるM&A手続の概要Ⅱ
M&A(買い手側)の基礎知識⑤-弁護士が関わるM&A手続の概要Ⅲ
M&A(買い手側)の基礎知識⑥-弁護士が関わるM&A手続の概要Ⅳ
M&A(買い手側)の基礎知識⑦-弁護士が関わるM&A手続の概要Ⅴ
M&A(買い手側)の基礎知識⑨-弁護士が関わるM&A手続の概要Ⅶ
M&A(買い手側)の基礎知識⑩-弁護士が関わるM&A手続の概要Ⅷ
M&A(買い手側)の基礎知識⑪-弁護士が関わるM&A手続の概要Ⅸ
M&A(買い手側)の基礎知識⑫-弁護士が関わるM&A手続の概要Ⅹ