5 従業員持株会の運営・存続
非上場会社の従業員持株会においては、設立後に総会や理事会が開催されず、また配当金が一切支払われない等、従業員持株会が有名無実化している場合も散見されます。
しかし、先に述べたように譲渡制限ルールの有効性の判断要素として、配当の実施状況があげられているため、多額の利益が出ているにもかかわらず無配当を継続していた場合には、後になって当該譲渡制限ルールの効力が否定され、従業員に対して多額の株式譲渡代金を支払わなければならない法的リスクが生じ得ます。
また、従業員持株会が形骸化することで、会社からの独立性を否定され、各種税務上のリスクや、従業員持株会の負担する債務が会社自身の債務であると判断されるリスクも高まる等、多くの弊害があります。
そのため、従業員持株会設立させただけで満足せずに、従業員持株会発足後においても、適切な運営を行うことが肝要となります。
ところで、持株会の規約や会社・従業員持株会の合意書において定めることで、会社内部に従業員持株会専用の事務所を設け、会社従業員がその従業員持株会の事務を代行し、あるいは従業員持株会の参加者が追加で株式を購入する場合の資金源として奨励金を交付する等の会社が従業員持株会(参加者)に対して一定の便宜を与えることも可能です。
もっとも、利益供与や株主平等原則との関係で他の株主との間で争いが生じるリスクや、税務上のリスクも生じ得るため注意が必要です。
従業員持株会に特別な便宜を与える場合には、社会通念上、従業員の福利厚生の一貫といえる範囲内に留めておく必要があり、弁護士等の各専門家に相談されることを強くお勧めします。
<終わり>