非公開会社においては、①剰余金の配当を受ける権利、②残余財産の分配を受ける権利、③株主総会における議決権の3つの権利つき、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができます。これを、「属人的定め」といいます。
株式の属性として権利内容に差異を設ける形ではなく、権利者の属性に基づく定款の定めが認められる点で、種類株式にない柔軟性があります。
もっとも、株主に与える影響が甚大であることから、属人的定めを定款に設けるためには、総株主の半数(頭数)以上で、かつ総株主の議決権の4分の3以上の賛成(株主総会特別特殊決議)が必要とされています。
会社法上、属人的定めも種類株式とみなされ、種類株式に係る各規定が適用されますが、種類株式とは異なり登記は必要ではありませんので、通常、外部にその内容が知られることはありません。
属人的定めの活用方法としては、例えば後継者が保有する株式については1株あたり10議決権とすることで議決権の集中を図ることができ、あるいは後継者以外の者が保有する株式については議決権を制限する代わりに配当額を持株数以上の割合で優遇するなどが考えられます。
属人的定めは、具体的事案に応じた柔軟な定めを設けることができる一方で、手続が厳格に定められており、仮に手続違反が存在する場合には、当該定めが無効とされてしまうリスクもあります。そのため、属人的定めを導入するにあたっては、会社法に通暁した弁護士に依頼することが適切です。
<続く>