4 株主対株主(類型Ⅳ)
同族会社においては、前述してきた紛争の多くが類型Ⅳの様相を呈していることが多いといえますが、本項では、その中でも特に株主対株主の様相が色濃く表れる紛争類型として、株主権の帰属を巡る紛争、解散の訴え、特別支配株主による株式等売渡請求について説明します。
(1)株主権の帰属を巡る紛争
実務上遭遇することの最も多い株主間での紛争類型は、非上場会社における株主権の帰属を巡る紛争、すなわち会社の株主が誰であるかについての争いです。
会社法上、取締役の選解任等の経営権の獲得や通常の会社運営に必要な基本的事項は原則として過半数の株式を保有する株主によって決めることができ、株主権の帰属が経営権の帰属にも繋がりかねませんので、株主権の帰属については、株主間で激しく争われる傾向にあります。
株主権の帰属が争われる例としては、株式譲渡の事実やその効力について争いがある場合の譲渡人と譲受人間の紛争がありますが、多くの場合は名義株の帰属について名義借人と名義貸人間で争われる場面です。
「名義株」とは、一般的に、出資者が自己の名義ではなく他人名義としていた株式をいうとされています。
中小企業においては、平成2年改正前商法において、株式会社の設立には7名以上の発起人が必要とされていたため、その員数を満たすために、現実の引受人以外の者の承諾を得て、発起人としての名義を借り受けることが多くなされていたため、社歴の長い会社ほど名義株の問題を抱えていることが多いといえます。また、創業者が死去し、相続が発生した際に名義株問題が顕在化することが多いといえます。
このような場合、判例は名義人ではなく実質上の引受人(出資した者)が株主となると解しています(最判昭和42年11月17日民集21巻9号2448号等)。
裁判例では、名義株主か否かは、①株式取得資金の拠出者、②名義貸与者と名義借用者との関係及びその間の合意内容、③株式取得(名義変更)の目的、④取得後の利益配当金や新株等の帰属状況、⑤名義貸与者及び名義借用者と会社との関係、⑥名義借りの理由の合理性、⑦株主総会における議決権の取扱い及び行使の状況を考慮し、判断するものとされています。
名義株の帰属について争いが生じるおそれがある場合は、これを見越した対策を講じることで、後に有利に立ち回ることができる場合もありますので、名義株の帰属の争いにつき具体的事案に即して適切な判断・対応をすることのできる弁護士に依頼することをお勧めします。
<続く>
会社内部紛争③-取締役対会社・取締役の地位、解任を巡る紛争-