(2)株主代表訴訟
「株主代表訴訟」とは、株主(公開会社においては原則として6ヶ月前から引き続き株式を有する株主)が、会社に代わって、取締役(元取締役を含む。)の責任を追及する訴訟等をいいます。
類型Ⅰ(取締役対会社)で説明した任意懈怠責任の追及が典型です。その他、会社法に規定された取締役の責任のみならず、取締役・会社間の取引により生じた取締役の取引債務についても訴訟提起できます。
株主代表訴訟の提起を意図する株主は、株式会社に対し、原則として役員等の責任追及の訴えの「提訴請求」を行う必要があります。この際、株主は、会社に対し、提訴しない場合には提訴をしない理由を書面等により通知するよう請求することができます。
提訴請求は、書面等により行う必要があり、被告となるべき者、請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実、提訴請求の受領権限を有する名宛人をそれぞれ記載しなければなりません。
提訴請求の受領権限を有する名宛人は、被告となるべき者が取締役である場合には、監査役設置会社では監査役(監査等委員会設置会社では監査等委員、指名等委員会設置会社では監査委員)となります。監査役非設置会社では代表取締役となると解されています。ただし、被告となるべき者が代表取締役自身である場合には、名宛人は代表取締役以外の取締役になると解されます。
提訴請求書を受領した株式会社が、60日以内に取締役に対し責任追及訴訟を提起しなかったときは、株主は、会社のために株主代表訴訟を提起することができます。
なお、株主代表訴訟の提起にあたっては、情報収集のために、類型Ⅱにおいて記載した各種情報収集手段が利用されることがあります。
上述したとおり、代表訴訟提起にあたっては提訴請求という手続が必要であって、有効な提訴請求がなされない場合に代表訴訟を提起したとしても、訴えが却下されてしまうおそれがあります。
そして、役員の負担する損害賠償債務も時効によって消滅することがありますので、仮に訴訟が却下されてしまうと、改めて手続を履践して代表訴訟を提起したとしても、時効が完成していて請求が棄却されてしまうことにもなりかねません。
このように提訴請求は重要な手続きですので、株主代表訴訟を提起しようと考えている株主としては、代表訴訟に明るい弁護士に依頼することをお勧めします。
また監査役や取締役としても、株主代表訴訟に適切かつ迅速に対応するためには、高度に専門的な知見と経験を要するため、提訴請求を受けた時点で速やかに弁護士に相談・依頼すべきです。
<続く>
会社内部紛争③-取締役対会社・取締役の地位、解任を巡る紛争-