加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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会社内部紛争④-取締役対会社・責任追及を巡る紛争-

(3)責任追及を巡る紛争(利益相反取引に係る紛争、任務懈怠に係る紛争等)

 会社は、取締役が任務懈怠行為、すなわち故意又は過失により法令または定款に違反する行為をし、会社に損害を被らせた場合には、当該取締役に対して、その損害の賠償を請求することができます。

 取締役と会社との関係は、委任ないし準委任であって、民法の委任に関する規定に従うため、取締役は会社に対して善管注意義務を負い、また会社法においては取締役の忠実義務が定められていますので、取締役が、かかる義務等に違反して会社に損害を与えた場合にも、当該取締役は、会社に対して、損害賠償責任を負担します。

 取締役の任務懈怠責任が問題となる場面としては、主として①法令や定款に違反する行為を行った場合、②経営判断を失敗した場合、③監視・監督義務を怠った場合が挙げられますが、本項においては、特に会社対取締役の構図が色濃い①法令に違反した場合の内、利益相反取引と競業避止義務違反について取り上げます。

ア 利益相反取引

 利益相反取引」とは、裁量により会社に不利益を及ぼすおそれのある全ての財産上の取引行為を指し、取締役が自己又は第三者のために会社と取引をする「直接取引」と、会社が取締役以外の者との間で会社と取締役との利益が相反する取引を行う「間接取引」の双方を含みます。

 取締役が益相反取引を行おうとする場合には取締役会非設置会社においては株主総会普通決議による承認、取締役会設置会社においては取締役会の承認決議を経る必要があり、この際取締役は、取引についての重要な事実を開示しなければなりません。

 利益相反取引であるにもかかわらず、承認機関による承認決議を経ることなく取引を実行すると、それ自体が法令に違反する任務懈怠行為となりますので、利益相反取引か否かが不明な場合には、念のために承認機関による承認決議を経ることが肝要です。

 また、承認機関による承認を得た上で利益相反取引を行ったとしても、これにより善管注意義務等が免除されることにはなりませんので、当該取引によって会社に損害を与えれば、取締役は損害賠償責任の負担を免れません。

 利益相反取引を理由とする取締役の責任追及訴訟においては、主として取引の利益相反性、善管注意義務・忠実義務違反の内容や、損害の発生及びその額について争われることとなります。

イ 競業避止義務

 取締役は、自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、取締役会非設置会社においては株主総会の、取締役会設置会社においては取締役会の承認決議を経る必要があり、これを一般に取締役の「競業避止義務」といいます。

 承認決議の有無にかかわらず取締役が競業取引を行い、会社に損害を与えた場合には、取締役の任務懈怠責任が問われることとなります。

 取締役の競業避止義務は、在任中の取締役に課された義務であって、退任した取締役はこの義務を負いません。

 もっとも、取締役が退任後に同種事業を行うことを予定して、その在任中に準備を行っていた場合には、善管注意義務に違反する任務懈怠行為と解される可能性があります。

 また、会社と取締役との間で、退任後の競業禁止についての合意をしていた場合には、これに違反した元取締役に対して損害賠償請求をすることが考えられます。

 ただし、かかる合意の内容によっては、退任後の取締役の職業選択の自由を不当に侵害するものであるとして、公序良俗に反して無効と判断されることがあります。合意の有効性の判断は、①合意内容が会社の正当な利益の保護を目的とすること、②取締役の退任前の社内における地位、③競業が禁止される業務、期間、地域の範囲、④会社による代償措置の有無等を総合して判断することとなります。

 なお、競業行為の態様によっては、不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性もあります。

 会社としては、重要な情報が社外へ流出することのないよう、取締役任用契約において秘密保持義務や競業禁止の合意をしておくことが肝要となります。

<続く>

会社内部紛争①-会社内部紛争の4つの類型-

会社内部紛争②-取締役対会社・役員報酬等を巡る紛争-

会社内部紛争③-取締役対会社・取締役の地位、解任を巡る紛争-

会社内部紛争⑤-株主対会社・経営権獲得を巡る紛争-

会社内部紛争⑥-株主対会社・会社運営の適法性、妥当性確保のための紛争-

会社内部紛争⑦-株主対取締役・取締役解任の訴え-

会社内部紛争⑧-株主対取締役・株主代表訴訟-

会社内部紛争⑨-株主対株主・株主権の帰属を巡る紛争-

会社内部紛争⑩-株主対株主・解散の訴え-

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