加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「同一労働・同一賃金」⑦―とるべき対応(説明義務編)

第1 はじめに

 本稿では中小企業にとっても目前に迫るパート有期法の施行に備え、事業主がとるべき対応のうち、説明義務について扱います。

  

第2 説明内容

1 雇い入れ時に義務づけられる説明の内容(14条1項)

 有期雇用労働者、パートタイマーなどの非正規社員(以下「短時間・有期雇用労働者」といいます。)の雇入れ時(労働契約の更新時も含む)に説明が義務付けられる事項は次の①~⑤に関して事業主が講じる措置の内容です。

① 不合理な待遇の禁止・差別的取扱いの禁止

② 賃金の決定方法

③ 教育訓練の実施

④ 福利厚生施設の利用

⑤ 通常の労働者への転換を推進するための措置の内容

  

 また、上記に加えて、事業主は、短時間・有期雇用労働者の雇い入れ時には労働基準法に従って、労働時間等の重要な労働条件について、労働条件通知書を交付して説明する必要があります。

  

2 求めがあった場合に義務づけられる説明の内容(14条2項)

 事業主は、短時間・有期雇用労働者が求める場合には、次の①~⑦に関する事業主の決定に当たって考慮した事項に加え、通常の労働者との間の待遇差の内容及びその理由について説明することが義務付けられます。

① 労働条件に関する文書の交付

② 就業規則の作成手続(当該事業所において雇用する短時間・有期雇用労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めること)

③ 不合理な待遇の禁止・差別的取扱いの禁止

④ 賃金の決定方法

⑤ 教育訓練の実施内容

⑥ 福利厚生施設の利用

⑦ 通常の労働者への転換を推進するための措置の内容

  

 説明の内容としては、比較する通常の労働者は誰なのか、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間にどのような待遇の相違があるのか、待遇の決定基準(賃金テーブル等の支給基準)はどのようなものか及び待遇差の理由を説明することが必要です。

 待遇差の理由を検討する際には、不合理な待遇差の禁止(均衡待遇)に関するパート有期法8条の考え方を理解しておくことが有用です。これについては「同一労働・同一賃金」②-基本的な考え方(2つのステップ&4つの要素)をご参照ください。

 要点をまとめますと、事業主としては、個々の待遇ごとに、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との職務(①業務内容+②責任)の内容、③職務内容及び配置の変更の範囲並びに④その他の事情がどのように異なるのかを検討し、説明できる状態にすることが望ましいといえます。

  

第3 説明の具体的方法

 雇い入れ時の説明の具体的方法については、①新たに雇用する労働者に一人ずつ個別に説明を行う方法、②説明会等によって一斉に説明を行う方法のいずれも許容されています。

 また、雇い入れ時の説明及び短時間・有期雇用労働者から求めがあった場合の説明のいずれにおいても、書面の交付は要求されておらず、口頭の説明でも足りるものとされています。

 一方で、説明書面を作成すれば労働者にとっても分かりやすく、書面を交付する方法で説明義務を果たすことが可能であり事業主の負担軽減につながります。ただし、労働者に交付した説明書面は、後の訴訟等の手続における証拠となってしまいますので、作成にあたっては顧問弁護士等の専門家の指導を受けられることをおすすめいたします。

 説明書面の書式については、厚生労働省が公表している「説明書モデル様式」(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000494603.pdf)が参考になります。

  

第4 不利益取扱いの禁止(14条3項)

 短時間・有期雇用労働者が待遇差の内容・理由の説明を求めたことを理由とする解雇その他の不利益取扱いをしてはなりません。

  

第5 実行確保措置(18条)

 本稿でご紹介した事業主の説明義務に関する規定(14条)に違反した場合、労働局から指導や勧告等を受ける可能性があり、これに従わない場合には企業名の公表が予定されています。万が一、企業名の公表に至った場合には企業価値が棄損されることになりかねません。

  

第6 とるべき対応

 以上から、説明義務の関係で事業主がとるべき対応は次のとおりです。

  短時間・有期雇用労働者の有無・人数の把握

 ② 短時間・有期雇用労働者の待遇の把握

 ③ 待遇差がある場合には、待遇差の理由を確認し、説明可能な状態にすること

 ④ 説明の準備

(例)短時間・有期雇用労働者を雇い入れる際の説明会の開催を検討

   説明書面の作成   

(弁護士 林征成)

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