前回までのおさらい:
これまで、「同一労働・同一賃金」を解説するシリーズ記事として、
① 改正法の概要、
② 待遇差の不合理性の判断についての基本的な考え方(2つのステップ&4つの要素)、
③ 契約社員の賞与、
④ 契約社員の退職金、
について、近時の最高裁判決(大阪医科大事件、メトロコマース事件、日本郵便事件)の判断内容を踏まえて解説を行ってきました。
今回は、その次のステップについてご説明します。
つまり、不合理な待遇差や、不合理と評価されかねない待遇差があるとなったときに、法的リスクを回避するためにどのような措置を講じる必要があるのか、というお話です。
第1 典型的に想定される4つの方法
【方法①】パート・契約社員の待遇を引き上げる方法
一言で言えば、「王道」の対応です。
改正法が求めている対応は、まさにこれだと言っても良いでしょう。
しかし、これが簡単にできれば苦労はありません。
パート・契約社員の待遇を引き上げることは人件費を増大させることに他なりませんし、一度引き上げた待遇を後で引き下げること(労働条件の不利益変更)は困難です。
また、改正法の施行のタイミングで待遇の引き上げを行うことによって、「っていうことは、これまでの待遇は違法状態だったのでは?」という良からぬ疑念をアグレッシブな労働者に抱かせるおそれもあります。
【方法②】通常の労働者(正社員等)の待遇を引き下げる方法
一言でいえば、「邪道」とも言うべき手法です。改正法の理念を没却する手法であると言わざるを得ませんし、そもそも正社員の待遇を引き下げる(労働条件の不利益変更)こと自体容易ではありません。
【方法③】「待遇の性質・目的」を就業規則等で明示したり、パート・契約社員の「4つの要素」に限定を加える方法
非常に有意義であり、かつ、検討に値する方法です。
しかし、最新の裁判例の傾向等を踏まえた専門的な知見に基づく判断が必要な方法ですので、その意味で簡単にとり得る方法とはいえません。
ですので、この方法を検討する場合には、顧問弁護士等に各待遇ごとの実態を踏まえた検討を依頼することをお勧めいたします。
【方法④】「無期フルタイム」に転換する方法
一言でいえば、「逆転の発想」とでも言うべき手法です。
というのも、パート・有期法が直接的に問題としているのは、あくまでもパート・契約社員と正社員との待遇差ですので、「パートでも契約社員でもない地位」にチェンジしてしまうことにより、同法の直接的な適用を免れることが可能となるからです。
もっとも、ここでは詳細は述べませんが、必ずしも「法的リスクをゼロにできる方法」であるとは言えませんので、この方法を検討する場合にも顧問弁護士等と綿密な検討を行った上で実施することをお勧めいたします。
第2 おまけ:「4つの要素」を限定する、の具体例
【方法③】の一つとして、パート・契約社員について「4つの要素」を(正社員と比べて)限定する、という方法を「第1」にてご紹介しました。
あくまで「おまけ」としてですが、その具体例を、次の表にて、いくつかご紹介いたします。
本稿は以上です。
次回は、「説明義務」について解説をいたします。
以上
(弁護士 坂本龍亮)