前回までのおさらい:
「不合理な待遇差」か否かの基本的な判断枠組みである「2つのステップ」と「4つの要素」については、以前の記事をご覧ください。
今回は、「契約社員の退職金」について、メトロコマース事件最高裁判決を踏まえてご説明いたします。
結論としては、メトロコマース事件最高裁判決は、契約社員に対して退職金を支給しなかったことについて、「不合理な待遇差ではない」という判断を示しました。
しかし、大事なのは、その結論ではなく、理由の部分です。
メトロコマース事件最高裁判決も、改正法と同様、「2つのステップ」と「4つの要素」にもとづいて判断を行っています。
その判断内容を、ごくごく簡単にかみ砕いて整理すると以下の表のように整理できます。
大切なことですので、繰り返して言いますが、大事なのは最高裁の結論ではなく、結論に至る理由の部分です。
もし仮に、正社員と契約社員の業務内容に質的な差(難易度の差etc)がそれほど無かったら、どうだったのでしょう?(本件では、実は正社員と契約社員の業務にはそれほどの差はなかったのではないかとも思えますが...)
もし仮に、正社員も配置転換の可能性が事実上なかったとしたら、どうだったのでしょう?
もし仮に、正社員登用制度がなかったならば、どうだったのでしょう?
異なる結論(契約社員にも退職金を払うべき)に至った可能性があったかもしれません。
そういった観点から、「2つのステップ」と「4つ要素」を検討し、このメトロコマース事件最高裁判決の事案と比較検討する等して、検討を行う必要があるのです。
本稿は、以上です。
次回は、契約社員の「有給の病気休暇」について、大阪医科大学事件最高裁判決と日本郵便事件最高裁判決の2つの判決を踏まえてご説明いたします。
以上
(弁護士 坂本龍亮)