加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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新型コロナウイルス感染症対策と株主総会②(継続会の実施)

はじめに

 本稿を始めとする一連の記事においては,新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から,企業の皆様が令和2年度の定時株主総会において,直面しうる問題点とそれに対する対応の一例を簡単にご紹介させて頂いております。企業の皆様の株主総会対応の一助となれば幸いです。

 本稿では,株主総会の開催方法の一つとして継続会の実施による方法をご紹介致します。

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継続会の実施

 定款において剰余金の配当の基準日を期末である3月末日と定めている場合には,基準日株主に剰余金の配当をするためには,基準日から3ヶ月以内に剰余金の配当に関する決議を行う必要があることから(会社法454条1項,124条2項),例年どおり6月頃に定時株主総会を開催する必要があります(参照:経営法友会「緊急事態宣言下での総会対応についての意見」)。

 計算書類や事業報告の作成は間に合わないが,例年どおりの時期に剰余金の配当に関する決議等を行う必要がある場合には,まず例年どおりの時期に定時株主総会を開催し,決算報告,事業報告は後日「継続会」を開催して行うことにつき株主の承認決議を得て,基準日株主による決議を要する事案についてのみ,審議,決議を行い,継続会において決算報告,事業報告を行うという,2回株主総会を開催する方法も考えられます。


1 継続会の開催に関する株主総会決議の内容等

 この場合,当初の株主総会の開催日において,継続会の開催につき,株主総会決議を得なければなりません(会社法317条)。継続会開催の決定は,株主総会の議事進行に関する事項の決定ですので,株主総会に出席した株主のみにより決定します。そのため,委任状に基づき代理人が出席している株主については,当該代理人が継続会開催の可否の決定に参加できますが,議決権行使書面や電磁的方法により議決権行使した株主は,継続会開催の決定には,賛否の何れにも算入することはできません。

 このとき,継続会の開催時期,場所についても株主総会決議を得るのが通常ですが,決算業務や監査業務の進捗状況に鑑み未だ開催時期を決定できない場合には,議長に一任するとの内容の議案で株主総会決議を得ることも許容されると解されています。このとき,議長は,継続会開催の時期,開催場所について決まり次第,株主に対して事前に十分に周知することが望ましいです。


2 継続会の開催時期

 継続会の開催時期について,今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の問題が生じるまでは,当初の株主総会との連続性に鑑み当初の株主総会開催後2週間以内に開催すべきであると考えられていましたが,金融庁・法務省・経済産業省「継続会(会社法317条)について」において,新型コロナウイルス感染症の感染が拡大している現状に鑑みれば,当初の株主総会の開催日から3ヶ月を超えないことが目安となるとの考えが示されています。とはいえ,従前できる限り期間が開かないうちに継続会を開催すべきであると考えられていたことに鑑みれば,役員や従業員等の健康と安全に配慮しつつも,決算業務や監査業務を行うために必要な期間の後,速やかに継続会を実施することが望ましいでしょう。

 なお,継続会は,あくまで当初の株主総会から継続して行われる株主総会の一部という位置づけになりますので,継続会の開催について改めて招集手続を行う必要はありません。


3 各々の開催日における実施内容

 継続会を用いて株主総会を開催する場合,当初の開催日においては,基準日株主による議決権行使を要する議案について決議,継続会開催に関する決議を行わなければなりません。その他の決議事項についても基本的には当初の開催日において決議を行い,継続会においては,決算報告,事業報告を行い,計算書類の承認決議を行う(ただし,会見監査人設置会社のうち,会計監査報告に無限定適正意見が付され,会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認める監査役等の意見がないこと等,会社計算規則135条の要件を充足する場合には,計算書類の承認は不要です。)のみとしておくのがよいでしょう。継続会開催の理由は,決算業務,監査業務等の遅れであるため,その他の決議事項について継続会まで延期する合理的な理由があるとは考えがたいためです。


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