加藤&パートナーズ法律事務所

加藤&パートナーズ法律事務所

法律情報・コラム

法律情報・コラム

新型コロナウイルス感染症対策と株主総会①(開催時期の選択)

はじめに

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,令和2年4月に緊急事態宣言が発令され,同年5月にその期間が5月末まで延長されました。日本企業の多くは3月決算であることから,本来6月に開催する定時株主総会の開催について,例年とは異なる対応を余儀なくされ,検討を進められているところかと思います。

 本稿を始めとする一連の記事においては,企業の皆様が令和2年度の定時株主総会において,直面しうる問題点とそれに対する対応の一例を簡単にご紹介致します。企業の皆様の株主総会対応の一助となれば幸いです。

関連記事

新型コロナウイルス感染症対策と株主総会②(継続会の実施)

新型コロナウイルス感染症対策と株主総会③(バーチャル株主総会)

新型コロナウイルス感染症対策と株主総会④(開催時の注意点)

新型コロナウイルス感染症対策と株主総会⑤(会社法施行規則・会社計算規則の改正)

新型コロナウイルス感染症対策と株主総会⑥(取締役の任期)


定時株主総会の開催時期の選択について

 緊急事態宣言の発令に伴い,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため,人と人との接触を8割削減することが目標として掲げられました。それに伴い,不特定多数の人が接触する催事の多くが中止や延期となっています。株主総会も議場に多くの株主や役員が一堂に会することとなるため,新型コロナウイルス感染症の感染リスクに鑑み,定時株主総会を延期することも選択肢の一つとして考えられます。

 また,定時株主総会においては,事業報告を行い,計算書類の承認を受けることとなっているところ(会社法438条),新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために役員や従業員の出勤,業務を一部制限したことにより,例年どおり決算業務や監査業務を進めることができず,計算書類や事業報告の作成が間に合わないため,やむを得ず,定時株主総会を延期することとなる場合もあるでしょう。

 会社法上,定時株主総会の開催時期については,毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと定めるのみであり,事業年度の末日3か月以内に招集することまでは求められていません(会社法296条1項)。

 また,企業の定款に定時株主総会を毎年6月に開催する旨の定めが置かれていたとしても,通常,天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで,その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではないと考えられています(参照:法務省「定時株主総会の開催について」)。

 そのため,新型コロナウイルス感染症の感染リスクが高まっているこの状況においては,定款に定めた時期に定時株主総会を開催できないとしても,この状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りると考えられます。

 ただし,定款において定時株主総会の議決権行使のための基準日を3月末日と定めている場合,基準日株主が権利行使できるのは基準日から3か月以内に行使する権利に限られることから,定時株主総会を延期する際には,改めて議決権行使のための基準日を定め,公告する必要がある点には留意が必要です(会社法124条2項,3項)。


トップへ戻る