民法改正案など関連法案(以下「本改正」といいます。)が、平成30年7月5日、参院法務委員会で与党などの賛成多数で可決され、成立しました。
かかる改正は、配偶者が自己の住まいや生活資金を確保しやすくする趣旨で、相続法を以下のとおり変更するものです。
まず、配偶者は、自身が亡くなるまでの間、今の住居に住むことができる配偶者居住権を有することになります。
また、遺産分割についても見直され、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、配偶者に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与を行ったときは、民法第903条第3項の持戻し免除の意思表示があったものと推定されることになります。
これまで遺産分割において、被相続人の配偶者が自宅不動産を相続し、被相続人死亡以前と同様に自宅不動産上において居住し続ける例が多かったところ、相続分のほとんどを自宅不動産の相続で占めてしまう結果、配偶者が現預金等他の遺産につき全く相続を受けることができない例もありました。
そのため、本改正では、配偶者の居住権及び持戻し免除の意思表示の推定を認め、配偶者が生活の資として現預金等を相続することができるようにしました。
さらに、これまで被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと(以下「寄与行為」といいます。)に対して遺産相続上の評価が行われる主体は、相続人のみに限られていました(民法第904条の2第1項参照。ただし、本改正前においても、相続人以外の者の寄与行為を相続人の寄与分として主張することは可能と考えられています。)。これを受けて、本改正は、亡くなった被相続人の親族で相続対象でない人(以下「特別寄与者」といいます。)でも、被相続人の財産の維持又は増加に一定の貢献をした場合については、相続人に対し特別寄与者の寄与に応じた額の金銭を請求できる制度を設けました。
かかる改正は、息子の妻が義父母の介護をしていた場合などを想定するもので、高齢化に対応する改正であると言えるでしょう。
また、本改正では、自筆証書遺言の方式が緩和され、相続財産の目録を添付する場合には、自署することを要しないとして自署性の例外を認めたほか、遺言の効力に関する紛争を未然に防ぐべく、自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度が創設され、遺言者は、法務局に自筆証書遺言を保管するよう申請することが可能となりました。
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