加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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働き方改革関連法成立

 働き方改革関連法(以下「本法」といいます。)が平成30年6月29日参議院本会議で可決、成立しました。本法は、残業時間の上限規制や、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」、高収入の一部専門職を労働時間の規制から外す「脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)」の導入を柱とするものです。
 以下、本法の概要を述べます。

第1 残業時間の上限規制

 現行労働基準法によれば、原則として1日8時間、週40時間を超えて労働させた場合、違法となりますが(同法第32条)、使用者と労働組合又は労働者代表者との間において、時間外労働に関する労使協定を締結した場合には、延長が認められており、かかる延長には法律上上限がありません(厚生労働省告示は「月45時間、年360時間」までと基準を定めていますが、あくまで告示であることから直接的には法的拘束力はありません。)。
 本法は、長時間労働を是正するため、残業時間の上限を「単月で100時間未満、年720時間」までと定め、違反した場合の罰則も設けられました。

第2 同一労働同一賃金

 現行労働契約法第20条は、有期雇用者の労働契約の内容である労働条件と無期雇用者の労働契約の内容である労働条件との間において、不合理な差異が生じることを禁止する旨規定しています。
 本法は、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の第8条を改正し、有期雇用者に対する不合理な待遇の禁止を設けました。これに併せて労働契約法第20条を削除し、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」という名称を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「改正雇用管理法」といいます。)に改正しました。また、改正雇用管理法では、「基本給、賞与、その他の待遇」の不合理な待遇の禁止を規定し、不合理性の判断につき「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮」すると規定しており、禁止される待遇の具体的内容、及び不合理性の判断方法について明確化しています。

第3 脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)

 労働基準法が改正され、新たに第41条の2が規定されました。これは、いわゆる脱時間給制度を規定するものです。脱時間給制度とは、職務の範囲が明確で、一定の年収(改正時点では、年収1075万円以上。ただし、省令で変更可能。)を有する労働者(以下「対象労働者」といいます。)が、高度の専門的知識を必要とするなどの業務(以下「対象業務」といいます。)に従事する場合に、本人の同意や委員会(賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とするもの。構成員は、使用者及び当該事業場の労働者を代表する者に限られる。)の決議等があることを条件として、対象労働者につき、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定の適用が除外される制度です。
 改正時点では、金融アナリストやコンサルタントなどの業務に限定されていますが、これについても年収要件と同じく省令で定められるに過ぎないことから、将来的に対象業務が拡大される可能性があります。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3239898029062018MM0000/

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