司法取引制度が、平成30年6月1日、施行されました。司法取引制度とは、組織的な犯罪の解明を目的として導入された捜査・公判協力型の合意制度のことで、平成28年度の刑事訴訟法改正により新設されたものです(以下、かかる制度を「合意制度」といいます。)。
合意制度について簡単に概略を説明しますと、被疑者・被告人が、組織的な犯罪において中心的な役割を担った第三者の犯罪を明らかにするため、検察官等に対し、真実に合致する供述をしたり、証拠を提出するという協力行為の見返りに、起訴の見送りや求刑の軽減を受けることができる制度です。
かかる合意制度が対象とする事件は、一般的に立証が困難な汚職、詐欺、横領事件という財産事件や、独禁法違反などの経済事件、薬物・銃器犯罪等に限られます。
また、被疑者・被告人が合意に反し、虚偽の供述や証拠を提出した場合に5年以下の懲役が科されうる内容の罰則が定められ、えん罪の防止が一応図られています。
もっとも、被疑者・被告人に求められる真実の供述とは、客観的な事実関係に合致することではなく、自己の記憶に従った供述をすることを意味し、結果として誤りであることが後に判明した場合であっても、罰則の適用があり得る「虚偽の供述」には当たりません。
最後に、合意制度の利用には弁護士の同意が必要であるとされていることに加え、検察官は、客観的な裏付けもなく信用性も判断しがたい供述に対し、合意に応ずる可能性は低いと考えられることも考慮すれば、被疑者・被告人と弁護士との間で,綿密な協議を行うことが極めて重要であると言えます。