日本取引所自主規制法人(注1)は、平成30年2月21日、「上場会社における不祥事予防のプリンシプル(案)」(以下「本件プリンシプル」と言います。)を策定したと発表しました。本件プリンシプルは、平成30年3月14日までの間、日本取引所グループのウェブサイトにて実施されるパブリックコメント手続き(注2)の結果を踏まえて、同月下旬に正式決定される予定です。
本件プリンシプルの内容は、以下のとおりです。
①実を伴った実態把握
②使命感に裏付けられた職責の全う
③双方向のコミュニケーション
④不正の芽の察知と機敏な対処
⑤グループ全体を貫く経営管理
⑥サプライチェーンを展望した責任感
また、こうした取組みを進める上で「経営トップによるリーダーシップの発揮が重要である」と指摘しています。
日本取引所自主規制法人は、平成28年2月24日、「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」を策定しています。これは、実際に不祥事に直面した上場会社の速やかな信頼回復と確かな企業価値の再生に向けた指針を示しています。本件プリンシプルは、事後対応の取組みだけでは不十分であることから、事前対応としての不祥事予防の取組みのために策定されました。このことについて日本取引所自主規制法人は、「これらのプリンシプルを車の両輪として位置付け、実効性の高い取組みを推進していただくことを期待しています」と述べています。
近年は、平成27年に発覚した東芝の不正会計問題など上場企業の不祥事が多発し、平成28年以降も日産自動車やSUBARU(スバル)の無資格検査、神戸製鋼所や三菱マテリアルグループの性能データ改竄など品質管理面の不祥事が表面化しています。本件プリンシプルの策定は、このような不祥事を受けて、未然に防止する体制の構築を図ることを目的としていると思われます。
(注1)日本取引所自主規制法人は、日本取引所グループの傘下の法人。東京証券取引所及び大阪取引所の上場審査、上場管理、売買審査、考査等の業務を一手に担う自主規制機関。有価証券報 告書虚偽記載等、資本市場の基本インフラを脅かす事案に対して、不利益処分を判断する権限を有している。
(注2)パブリックコメントは、以下のウェブサイトで実施されている。https://form.jpx.co.jp/webapp/form/18913_lzbb_68/index.do
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180222/bse1802220500002-n1.htm