匿名組合契約の営業者が新たに設立される株式会社に出資するなどし,同社が営業者の代表者等から売買により株式を取得した場合において,営業者に匿名組合員に対する善管注意義務違反があるか否かが争われた訴訟において,最高裁は9月6日,かかる一連の行為が匿名組合員の犠牲において自己または第三者の利益を図る行為であったとは認められず,営業者に善管注意義務違反はないとした原審を破棄し,更に審理を尽くさせるため,東京高裁に差し戻しました。
最高裁の判決理由によれば,上記のような一連の行為は匿名組合員の利益を害する危険性の高いものであり,このような行為を行うことは,匿名組合員の承諾を得ない限り,営業者の善管注意義務に違反するものと解するのが相当であるにもかかわらず,原審は,このような承諾の有無について審理判断することなく善管注意義務違反を否定しており,かかる原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとしています。また,判決理由によれば,最高裁は,営業者による損益が全て匿名組合員に分配されるという匿名組合契約の性質,匿名組合員が一連の行為に関与する機会の有無,及び一連の行為にかかる取引価格と匿名組合員による出資額の大小等の諸事情に着目し,上記一連の行為が匿名組合員の利益を害する危険性の高いものであるとしています。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/107/086107_hanrei.pdf