報道等によれば,労災保険による休業補償給付を受けて療養中の従業員に対し,一定の賃金をまとめて補償する打切補償を行えば解雇ができるかどうかが争われた訴訟の差戻し控訴審判決が9月12日,東京高裁でありました。河野清孝裁判長は,解雇の無効確認を求めた元専修大職員の男性の請求を棄却し,解雇は有効と認めました。
労働基準法では,使用者が,業務上の疾病者の療養費を負担している場合に,療養開始から3年を経過すれば,打切補償を行うことによって解雇が可能とされているところ,本件では,疾病者が使用者からではなく,国から労災保険給付を受けている場合にも,そのような解雇が可能かどうかが争われていました。労働基準法75条1項は「使用者は,・・・必要な療養の費用を負担しなければならない」と規定し,一見,療養費の給付責任を使用者に負わせているように読めるため,療養費が国から支給されている場合には,使用者に療養費の負担はなく,打切補償を行っても解雇ができないとの解釈もありえるところです。しかし,かかる争点につき,昨年6月の上告審にて最高裁は,解雇は可能との初判断を示し,審理を差し戻していました。