彦根市が,所有者を同じくする彦根市内の複数の土地・建物(以下,「本件不動産」といいます。また,本件不動産のうち,土地については「本件土地」といいます。)に係る固定資産税等の滞納処分として,本件不動産を目的とする賃貸借契約に基づく賃料債権を差し押さえた(以下,「本件差押え」といいます。)のに対し,当該所有者が,本件土地は第三者より委託された信託財産であって,本件土地にかかる賃料相当額部分も信託財産であるから,滞納処分を行うことはできないなどとして,差押えの適法性が争われた訴訟において,3月29日,最高裁第三小法廷(大橋正春裁判長)は,本件差押えが全体として違法であるとして取り消されるべきであるとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,本件差押えが適法であるとした第1審判決は是認できるとし,被上告人(所有者側)の控訴を棄却しました。
最高裁は,判決理由において,旧信託法16条1項は,信託財産に関する租税債権などを除き,原則として信託財産に対する強制執行等を禁じているところ,本件差押えについては,滞納された固定資産税等のうち本件土地以外の不動産の固定資産税相当額に係る部分に基づき,賃料債権のうち本件土地の賃料相当額部分を差し押さえることとなる点において,旧信託法16条1項との関係で問題があると言わざるを得ないものの,国税徴収法63条が,徴収職員が債権を差し押さえるときはその全額を差し押さえなければならないと規定していることなどに照らすと,本件差押えの効力を直ちに否定すべき理由はなく,また,本件差押えを全体として違法とするような特段の事情もうかがわれないから,本件差押えは,適法であると述べています。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/791/085791_hanrei.pdf