法務省は、26日、女性につき、離婚後6カ月間の再婚を禁じた民法733条1項の規定を違憲とした最高裁大法廷判決(平成27年12月16日最高裁判決)を受け、民法改正案の概要を自民党法務部会に報告しました。改正案においては、上記最高裁大法廷判決が、同条の規定の目的である父性の推定の重複を回避するためには、100日の再婚禁止期間を設けることで足りるとし、これを超える期間を違憲としていることから、再婚禁止期間を6カ月から100日に短縮しました。ただ、今回の改正案は、再婚禁止期間の短縮のみならず、「離婚時に妊娠していない場合は100日を経過していなくても再婚できる」とも明記することとなりました。この案は、上記最高裁大法廷判決における6人の裁判官による補足意見において、再婚禁止期間の適用除外を定めた民法733条2項について言及されていた部分を参考にしたものであると思われます。
上記補足意見の概要を説明すると、以下の通りです。
すなわち、民法733条2項は、同条1項を除外する事由として、女性が前婚の解消等の後にその前から懐胎していた子を出産した場合を挙げているところ、これは、その出産後に懐胎した子については、当然に前夫との婚姻中に懐胎したものではないから、父性の推定を及ぼす必要がないとの理由によるものであると思われます。そうすると、同条2項に定めた以外の場合にも、父性の推定を及ぼす必要がないのであれば、再婚禁止期間の適用を除外すべきであるといえます。具体的には、女性に子が生まれないことが生物学上確実であるなど父性の推定の重複が生じ得ない場合、離婚した前配偶者と再婚するなど父性の推定が重複しても差し支えない場合などが挙げられ、過去の最高裁判決も、一定の事由により父性の推定が及ばないと解される場合には、再婚禁止規定の適用を除外しています。(最高裁昭和43年(オ)第1184号同44年5月29日第一小法廷判決・民集23巻6号1064頁、最高裁昭和43年(オ)第1310号同44年9月4日第一小法廷判決・裁判集民事96号485頁、最高裁平成7年(オ)第2178号同10年8月31日第二小法廷判決・裁判集民事189号497頁等参照)。また、従来の戸籍実務においても、前婚の夫との再婚の場合(大正元年11月25日民事第708号民事局長回答)、夫の3年以上の生死不明を理由とする離婚判決によって前婚を解消した場合(大正7年9月13日民第1735号法務局長回答、昭和25年1月6日民事甲第2号民事局長回答)、女性が懐胎することのできない年齢(67歳)である場合(昭和39年5月27日民事甲第1951号民事局長回答)及び3年前から音信不通状態にあり悪意の遺棄を理由とする離婚判決によって前婚を解消した場合(昭和40年3月16日民事甲第540号民事局長回答)などにおいて、再婚禁止期間内の婚姻届を受理してよい旨の取扱いがされており、このような取扱いは、民法733条1項の規定の適用除外についての上記のような理解に沿ったものと思われます。
このような理解に立つと、今回の改正案のように、前婚の解消の時点で懐胎していない女性については、民法733条2項に規定する前婚の解消等の後にその前から懐胎していた子を出産した場合と客観的な状況は異ならないため、再婚禁止期間の適用除外事由があるとしても不相当とはいえないでしょう。