株券発行会社は、有価証券である株券を発行することが予定されていることから、会社法において、株券不発行会社とは異なる規律がいくつかあります。
株券発行会社が、株券不発行会社と異なる点は、主として①株式の譲渡・質入れ(譲渡等)の方法(会社法128条、会社法146条)及び対抗要件の内容(会社法130条)、②株式の善意取得(会社法131条)の適用の有無、③株券提出手続(会社法219条)の要否の3点です。
その他にも株主名簿等に関する異同もありますので、後に掲載するコラムをご参照ください。
1 株式の譲渡等の方法
(1)原則ルール
株券不発行会社においては、株式の譲渡等は、当事者間における意思表示のみによって行うことができます。
これに対して株券発行会社においては、株主が株式を譲渡等する際、自己株式の処分による場合を除き、株券を交付しなければその効力が生じません(会社法128条1項、会社法146条2項)。
なお、株券発行前においては、株式譲渡当事者間で、株券を交付しなかったとしても株式譲渡は有効ですが(最判令和6年4月19日)、会社との関係においては効力が生じません(会社法128条2項)。但し、株式の譲受人は、譲渡人の会社に対する株券発行請求権を代理行使することができます(同最判)。
<続く>