株券には、株券であることの表示のほか、①会社の商号、②当該株券に係る株式の数、③当該株券に係る株式が譲渡制限株式(会社法2条17号)である場合はその旨、④種類株式発行会社(会社法2条13号)においては当該株券に係る株式の種類及びその内容、⑥株券番号を記載し、代表取締役がこれに記名押印(又は署名)をする必要があります(会社法216条)。
株券には、上記法定記載事項以外を記載することも可能で、会社法施行前において株券に記載することが求められていた株主の氏名や、会社成立の年月日、株券発行の年月日などを株券に記載する例は、現在においても多く存在します。
この点、会社法施行後に定款変更を行っていない株券発行会社においては、会社法施行前の上記法定記載事項を株券の記載事項として定款に定めている可能性があります。
株券には、上記法定記載事項を全て記載していれば、通常、その有効性に疑義が生じることはありませんが、コンプライアンスの観点から、株券発行にあたっては、定款違反の株券を発行することのないよう、定款の記載をも併せて確認するのが適切です。
なお、株券に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をした場合には、過料の対象となる(会社法976条15号)上、株券の効力に疑義を生じさせ、仮に株券が無効と判断された場合で、これを有効であると信じた者が損害を被ったときには、会社や役員は、その損害を賠償する責任を負担することにもなりかねません。
また、譲渡制限株式である旨の記載など、株券の記載事項であり、かつ登記事項につき、株券に記載がなされていなかった場合には、会社は、当該株券の取得者に対して、株券に不記載の事項を主張できない可能性もあります(会社法908条1項後段)。
そのため、株券の発行にあたっては、法定記載事項と定款を確認し、瑕疵のない株券を発行するよう慎重な対応が必要です。
<続く>