加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」競業取引・利益相反取引・利益供与10-利益供与②-

2 利益供与の禁止(会社法120条1項)

(1)主体

名義の如何を問わず、会社又は子会社の計算で行われる利益供与が禁止の対象です。例えば、取締役個人や従業員の名義で利益供与したとしても、報酬や給与で会社が補填するのであれば、会社の計算で利益供与したことになります。

(2)相手方

利益供与は「何人に対しても」との文言どおり、誰に対しても成立します。

(3)財産上の利益の供与

財産上の利益の供与」とは、金銭、物品のみならず、債権、知的財産権、電気、ガスなども含まれます。

また、債務免除や意図的に時効消滅させるといった消極財産を消滅させる行為も含まれます。さらに、相当な対価を得ている場合であっても、財産上の利益供与になり得ます。

情報・地位・取引の機会の提供については、専ら名誉だけの地位などについては含まれませんが、報酬が伴う地位、それを生かして利益を上げることができる情報、独占的な取引の機会などは財産上の利益に含まれるとする見解もあります。

このように「財産上の利益の供与」とは相当広い概念であることに注意が必要です。

(4)株主の権利行使に関し

株主の権利」とは、議決権、質問権、株主提案権、代表訴訟提起権など、自益権・共益権を問わず株主の権利のすべてが含まれます。

権利行使に関し」については、権利行使を促すため、権利行使をしないようにするため、いずれの利益供与も株主の権利行使との関連性が認められます。会社から見て好ましくない株主から株式を買い取るための資金を第三者に提供することも、当該株主の議決権行使を回避する目的である場合は利益供与にあたるとした判例があります(蛇の目ミシン事件・最判平成18年4月10日民集60巻4号1273頁)。

また、利益の供与者には、株主の権利行使に影響を与えることの認識が必要と解されていますが(高松高判平成2年4月11日金判859条3頁)、供与者と被供与者との意思の疎通は不要で、供与者がその趣旨を伝えて依頼をする必要もありません。

<続く>

「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」競業取引・利益相反取引・利益供与11-利益供与③-

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