1 利益相反取引における少数株主対策
会社法は、取締役が自己又は第三者の利益を優先し、会社の利益を損なう恐れがあるため、利益相反取引を規制しています。
取締役が利益相反取引を行うには、取締役会設置会社では取締役会において、取締役会非設置会社では株主総会において、重要な事実を開示した上で承認を得る必要があります(会社法356条1項2号3号、365条1項)。また、取締役会設置会社では取引をした取締役は、取引後遅滞なく、重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(会365条2項)。
しかし、競業取引と同様に、多くの中小企業経営者は、会社法上の利益相反取引規制を遵守していないように思われます。
経営陣が株主と対立した場合、株主は経営陣の不手際、不正など弱点を突くことを考えます。法律上、利益相反取引規制に違反した場合には、取締役は損害賠償責任を負い、株主代表訴訟の対象になること(会社法423条1項、847条1項)、取締役解任の正当事由、解任の訴えの理由にもなることも競業取引と同様です。利益相反取引違反の場合には、特別背任罪(会社法960条1項)が成立することもあり、より危険性が高いと言えます。
このように、利益相反取引違反は、経営陣に大きなダメージを与えるおそれがありますので、利益相反取引を行う場合には法定手続を厳守し、できれば取引自体を回避するべきです。
<続く>