加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」会社法を遵守した株主総会15-株主総会の運営に関する留意事項⑤-

3 典型的な株主総会の運営方法の違反

(4)株主からの質問への対応の不備と説明義務違反

総会の目的事項(議題)について、会社提案(議案)を上程・説明の後、通常は質疑応答の時間が設けられます。

個別議案ごとに質疑を受け付ける方法(個別審議方式)と、全ての議案についても説明が終わった後、採決の前に一括して質問を受け付ける方法(一括審議方式)があります。

株主からの質問に対しては、議長のみが回答する必要はなく、議長の指示した取締役、監査役、従業員等が回答することも認められます。議長は、円滑な議事進行のために「一議案に対し質問は10問まで」など、質問数を制限することも可能です。

株主の質問に対し、取締役・監査役は会社法上の説明義務(会社法314条)を負います。説明義務違反の場合、決議方法の法令違反として取消事由となる可能性があるため(会社法831条1項1号)、どのような事項につき説明義務を負い、どのような事項は説明する必要がないのかを把握しておくことが重要です。

ア 説明義務の範囲

 説明義務の範囲外であるのは、以下の事項です。

① 株主総会の目的事項(報告事項・決議事項)に関しない事項(会社法314条但書)。

② 説明により株主共同の利益を害する場合(会社法314条但書)

③ 説明するために調査を要する場合(会社法71条1号)

 ※ただし、株主が総会日より相当期間前に事前質問状等により質問を通知していた場合、調査が著しく容易な場合は除かれます。

④ 説明により会社その他の者の権利を侵害する場合(会社法施行規則71条2号)

⑤ 株主が実質的に同一事項につき繰り返し質問する場合(会社法施行規則71条3号)

⑥ 説明をしないことにつき正当な理由がある場合(会社法施行規則71条4号)

その他、説明が企業秘密に該当する例や、第三者の個人情報に関する場合、何度も重複質問がされる場合などは、説明を拒否することができます。

 

 イ 事前質問があった場合

説明義務は、総会の議場で現実に株主から質問があって初めて発生します(会社法314条)。つまり、事前質問状が送られたのみで、議場で質問がされない場合には、説明義務は生じません。

もっとも、株主のために、事前質問状記載の質問については、質疑応答の冒頭で一括回答することなども認められます。

株主が事前質問状を送付していた場合には、調査が必要との理由による回答拒否が原則として出来ない点、留意が必要です。

ただし、質問状の会社への到達日や質問内容からして、明らかに準備不能なレベルであれば別です。

株主からの事前質問状は、会社の「調査が必要」という理由による回答拒否を封じる効果があります。

ウ 説明の程度

どの程度説明すればよいかについては、議案に関する質問の場合、「平均的株主が決議事項につき合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明がなされたかどうか」という観点で判断されます。

つまり、質問者である当該株主が、「理解できない」と言い続けたとしても、客観的に合理的な説明がなされているかどうかが重要です。また、質問は株主総会の目的事項に関するものに限られますので、「株主が議案の賛否の判断を決定するに当たって、必要な情報が提供されているか」という観点も重要です。

<続く>

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