2 典型的な招集手続違反(続)
(7) 招集通知を送るべき株主に送っていない
招集通知を送るべき株主とは、当該株主総会において議決権を行使できる株主です(会社法299条1項・298条2項括弧書)。議決権のない種類株主や、単元未満株主(会社法189条1項)には招集通知を送る必要はありません。
多くの会社では事業年度末日の株主名簿記載の株主を議決権行使可能な株主とする基準日制度(会社法124条)を定款に定めていますので、定時株主総会の場合は直近の事業年度末日の株主名簿上の株主に対して招集通知を発送します。この際、株主名簿上の株主の住所に招集通知を発送すれば足ります(会社法126条1項)。
上記のとおり、招集通知を送るべき株主は「株主名簿上に記載された株主」と明確ですが、実際には、様々な問題が潜んでいます。招集通知を送るべき株主に送っていない場合は、招集通知漏れとして、株主総会決議の取消事由となり、招集通知漏れの程度が大きい場合には、決議が不存在とされることもありますので留意が必要です。
以下よくある問題とそれに対する回答を見ていきます。
① 郵便が到達しない所在不明株主がいる
→5年以上継続して招集通知などが到達しない場合には、招集通知を発する必要がなくなります(会社法196条1項)。ただし、5年間到達していないことを示す郵便記録を保管しておくべきです。
② 株主に相続が発生し、相続人の準共有となっている場合
→相続人から株主名簿の書換請求がなされていなければ、会社は相続の事実を知っていたとしても、株主名簿上の故人の株主の住所に対して招集通知を発すれば足りると解されます(会社法126条1項)。
ただし、相続人から、権利行使者の指定通知(会106条)が会社に対してなされている場合など、相続人株主が株主総会への参加を意図している場合には、株主名簿の書換えがなされていないとしても、指定された者に対して招集通知を発送してもよいでしょう。
③ 名義株が存在する場合
→株主名簿上の株主は単なる名義貸しであり、真の株主が別の者であると会社が認識している場合には、対応が問題となり得ます。名簿上の株主を株主として扱い、招集通知を発する場合、会社がその者を株主として認めていることの一事情となりますので、会社の立場によっては留意が必要です。
<続く>
「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」会社法を遵守した株主総会11-株主総会の運営に関する留意事項①-