2 典型的な招集手続違反
株主総会の開催にあたって、特に中小企業で見られる典型的な招集手続違反を以下で説明します。もっとも、手続違反はこれらに限られるわけではなく、手続の適法性については、自社の機関設計、株主構成、従前の株主総会開催の有無等も考慮し、慎重に検討する必要があります。
(1) 株主総会の招集決定の取締役会を開催していない
取締役会設置会社では、株主総会の招集・提出議案を決定するために取締役会決議が必要です(会社法298条4項・1項各号)。
しかし、取締役会を開催せずに代表取締役をが招集している例のほか、取締役に社外取締役や実働していない名目的取締役がいる場合に一部の取締役を招集することなく株主総会の招集を決定している例や、当該取締役会の取締役会議事録を作成していない例も散見されます。
株主総会の招集を決定する取締役会では、以下の事項を決定することが必要です(会社法298条1項各号)。
① 株主総会の日時・場所
② 株主総会の目的事項(議題)
③ 書面による議決権行使(会社法311条)が可能なことを定める場合はその旨
④ 電磁的方法による議決権行使(会社法312条)が可能なことを定める場合はその旨
⑤ その他法務省令で定める事項(会社法施行規則63条)
なお、これらは、招集通知に記載すべき事項ともなるため(会社法299条4項)、招集通知の作成においても留意が必要です。
上記のうち、③と④は、中小企業で採用している例はほとんどありません。通常は①と②、そして議案によっては⑤が重要です。
(2) 計算書類等を取締役会・監査役が承認していない
取締役会設置会社においては、計算書類、事業報告、これらの附属明細書は、監査役の監査を受けた上で、取締役会による承認を得る必要があります(会社法436条3項)。
また、監査役は監査報告を作成し(会社法施行規則129条・会社計算規則122条)、取締役会の承認は取締役会議事録を作成する必要があります。
(3) 招集通知の記載事項に不備がある
株主総会の招集通知は、取締役会設置会社では書面で行う必要があります(会社法299条2項)。招集通知の記載事項は上記①~⑤の取締役会で決定すべき事項です(会社法299条4項・298条1項各号)。
特に、取締役会設置会社では、株主総会の目的事項として定め、株主に通知した事項以外は決議できません(会社法309条5項)。
例えば、議題について、計算書類の承認や役員の選任以外を単に「その他」など包括的な記載をしている例がありますが、このような記載では株主が議決権行使の準備をすることができないため、裁判では取消事由となる可能性が高いです。
また、役員選任の場合には、選任の員数は議題として明示し、少なくとも候補者とその略歴は議案の概要として記載が必要です。
その他、議題に応じて、上記⑤の会社法施行規則63条の各事項の記載に漏れがないかチェックが必要です。
<続く>