加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」 コンプライアンス経営の重要性2-株主総会決議に関する訴訟のリスク-

1 株主総会の重要性

株主総会は、会社のオーナーである株主が集う会議であり、取締役会非設置会社においては万能の機関といえます(会社法295条1項)。取締役会設置会社においても、取締役等の役員人事、決算(計算書類)の承認、剰余金の配当、定款変更、新株発行、組織再編などの重要事項を決定する場です(会社法295条2項、329条1項、438条2項、199条2項、454条1項、446条、309条2項3項4項等)。

しかし、中小企業においては、株主総会議事録のみを作成して実際には株主総会を開催していない、または開催していたとしても会社法所定の手続きを経ていない例が多く見られます。

支配株主が株式を100%保有している場合、株主総会を開催していなくとも特に問題は生じませんが、そうでない場合、株主総会を開催していない、又は会社法上の手続きを遵守していない場合、少数株主から株主総会決議に関する訴訟を提起されるリスクがあります。

2 株主総会決議に関する訴訟類型

株主が提起できる株主総会決議に関する訴訟には、(ⅰ)株主総会決議不存在確認の訴え(ⅱ)株主総会決議無効確認の訴え(ⅲ)株主総会決議取消しの訴えの3種があります。

(ⅰ)株主総会決議不存在確認の訴え(会社法830条1項)

①実際には株主総会を開催していないにもかかわらず、議事録を作成して決議が存在したかのような外観を作出した場合や、②株主総会は開催したものの、多くの株主に対し株主総会招集通知がされていないなど法的に見て株主総会決議があったと評価できない場合などに、株主が株主総会決議の不存在の確認を求める訴えです。

(ⅱ)株主総会決議無効確認の訴え(会社法830条2項)

決議の内容が法令に違反する場合に、株主が株主総会決議の無効の確認を求める訴えです。例えば、財源規制(会社法461条)に反する剰余金配当決議(会社法454条1項)、自己株式取得決議(会社法156条1項)などが対象となります。

(ⅲ)株主総会取消しの訴え(会社法831条1項)   
①株主総会の招集手続又は決議の方法が法令・定款に違反し、又は著しく不公正な場合、②決議の内容が定款に違反する場合、③決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がなされた場合に、株主が、株主総会決議の取消しを求める訴えです。この訴えについては、株主は株主総会決議の日から3か月以内に訴えを提起する必要があります。

実務上は(ⅲ)株主総会取消しの訴えが多く思われます。上記3種の訴えにより株主総会決議の効力が否定されると、決議に基づく行為の効力が問題とされ、会社経営に混乱を招いたり、それ以降の株主総会決議の効力にも影響を与える場合があるため、対応コストが増大することもあります。

それゆえ、コンプライアンス経営のためには、会社法などの法令を遵守した株主総会の開催が必要です。

<続く>

「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」 コンプライアンス経営の重要性3-株主代表訴訟のリスク-

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