本年10月1日より景品表示法(「景表法」)に基づく内閣府告示の追加により、いわゆるステマ規制が導入されました。
これから全5回にわたってステマ規制の概要について解説します。
●ステマ規制とは
景表法5条は、事業者が行ってはならない表示を定めており、1号では優良誤認表示、2号では有利誤認表示の禁止を定め、これらに該当するもの以外の一定の表示であって、内閣総理大臣が指定する表示については3号により禁止されます。
今回のステマ規制は、同条3号に基づき内閣府が定める告示が追加されたことにより導入されました。
下記が関連する条項ですので、ご参照ください。
※景表法5条 (不当な表示の禁止) 第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。 一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの 二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの 三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの ※内閣府告示第十九号 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第5条第3号の規定に基づき、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を次のように指定し、令和5年10月1日から施行する。 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示 事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの |
●運用基準の策定
上記の通り、ステマ規制は「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」であること、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められる」ことの2つの要件を満たしたものに課せられる規制ですが、この告示の文言のみをみても実際にどのような表示である場合に規制の対象となるのかが判然としません。
こうした懸念があったことから、消費者庁は運用基準を定めていますので(令和5年3月28日消費者庁長官決定「「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準」https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_230328_04.pdf)、ステマ規制が問題となる事案の場合にはこの運用基準に照らして検討を行う必要があります。
●ステマ規制導入の背景
消費者庁が設置したアフィリエイト広告等に関する検討会は、ステルスマーケティングについて「広告主が自らの広告であることを隠したまま広告を出稿」すること(インフルエンサー等への宣伝の依頼も含む)と定義されています。
インフルエンサーが商品やサービスを薦めているとしても、それだけでは優良誤認標示にも有利誤認表示には当たりません。
もっとも、インフルエンサー等の影響力の強い者が商品やサービスを薦めることにより、消費者が低品質な商品等を購入してしまうことはあり得ることであり、消費者が適切に判断するためにステルスマーケティングを規制し、事業者の依頼による広告であることを表示させるようにするべく、今回のステマ規制が導入されました。
第2回からは運用基準について解説します。
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弁護士浅井佑太