12月7日、大阪高裁は、神戸地裁の判断を覆し、関西スーパーとH2Oの株式交換差止め決定を取消しました。
高裁で負けたオーケーが最高裁に不服を申し立てる手段としては、特別抗告(民訴法336条)と許可抗告(民訴法337条)が考えられます。特別抗告は憲法違反の場合ですから、現実的ではありません。そこで許可抗告が問題となります。
許可抗告は、高裁の決定に「最高裁判所の判例と相反する判断がある場合その他法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる」と高裁が判断した場合に限って、最高裁への抗告が許可される制度です。高裁のハードルを超えなければ、最高裁に不服を申し立てることができないのです。
差止めがらみの著名事件では、敵対的買収防衛策の差止めについてのブルドックソース事件、経営統合交渉差止めについての住友信託銀行対UFJホールディングス事件が、高裁が抗告を許可したことにより最高裁が判断しています。
関西スーパー対オーケーについては、高裁決定を見ていない段階で言うのもおかしな話ですが、高裁が抗告を許可する可能性もあると思います。
もちろん、高裁のハードルを越えることができたとしても、最高裁で結局ダメだったということもあり得ます。
勝ち負けにかかるクライアント利益の大きさ、タイトなスケジュール、社会的注目の大きさ。"関西スーパー争奪戦"を見るに、同業として、両当事者の弁護士はシビれる日々を送っていると想像しています。
加藤真朗
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