営業秘密(不正競争防止法2条6項)といった企業の有する"情報"の重要性については、どなたも否定されないと思います。
企業のリソースとして、人・物・金に『情報』が加えられることも珍しくありません。
2021年コーポレートガバナンス・コード改訂でも『知的財産』への投資が持続的成長・企業価値向上にとって重要であることが確認されています(補充原則4-2②、3-1③)。ここでいう『知的財産』には、特許権等の知的財産権だけでなく、技術上・営業上のノウハウ、データといった"情報"が含まれていると考えられます。
コストや時間をかけて蓄積した有益な情報は、まさにその会社にとって"宝"であり、競争力の源泉と言っても過言ではないでしょう。これら有益な情報が社外に流出することは、自社の競争力を著しく削ぐことになりかねません。
もちろん、情報保護の重要性についての意識は年々高まっています。
当事務所でも、秘密保持契約書や規定類、誓約書の作成、チェック(レビュー)のご依頼を頂くことは日常茶飯事です。
また、紛争案件を受任することも珍しくなくなっています。この秋には、2件の"情報"に関わる訴訟が終結しました。
1件は、国際的に展開している企業の依頼で、相手方は依頼会社の取引先です。取引先が依頼会社と競合部門を有する海外企業の傘下に入ったことから、情報管理を巡り、訴訟に至りました。
もう1件は、情報流出事案の一つの典型類型である内部者による不正事案でした。調査段階から、刑事告訴、民事訴訟と一連の流れのすべてに関わりました。
今後増々世のデジタル化が進むことは間違いありません。サイバー攻撃についても企業は当然想定しておくべきです。リスクを想定した十分な備えをしておかなければ、内部統制システムに不備があったとして、取締役の善管注意義務違反が問われるおそれもあります。
技術が進歩して便利になるのはありがたいことですが、その進歩に伴って新たな不安、やるべきことが増えていく現実には釈然としない想いを抱いてしまいます。
しかし、企業規模を問わず、サイバーセキュリティないし情報セキュリティというのが経営課題の一つであることはもう否定できません。
備えを疎かにしないようにお願いいたします。
・サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer 2.0(経済産業省)
・中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第3版(情報処理推進機構)
加藤真朗