加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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M&Aにおける株式移転② ― 株式移転の手続①

第1 株式移転の手続

 株式移転の手続は、以下の流れで行われます。

① 当時会社間での協議・金融機関等の重要債権者に対する説明

② 取締役会における株式移転計画承認決議

③イ 債権者に対する官報報告

   知れている債権者に対する個別催告

 ロ 株主に対する通知・公告

 ハ 新株予約権者に対する通知・公告

④ 株主総会の承認決議

⑤ 設立の登記・株式移転の効力発生

⑥ 完全子会社株主への移転対価の交付

  

 本稿では、株式移転の手続のうち株式移転計画の内容、株式移転完全子会社における株主総会による承認について説明いたします。

  

第2 株式移転計画

1 株式移転計画において定めるべき事項

 株式移転をするときは、株式移転完全子会社となる会社は、株式移転計画を作成しなければなりません(772条1項)。

 共同株式移転の場合は、株式移転完全子会社となる会社は,それぞれ共同して株式移転計画を作成する必要があります(772条2項)。

  

 株式移転計画においては、次の事項を定める必要があります(773条1項)。

 ① 株式移転設立完全親会社の目的、商号、本店所在地および発行可能株式総数

 ② 株式移転設立完全親会社の定款事項

 ③ 株式移転設立完全親会社の設立時取締役の氏名

 ④ 株式移転設立完全親会社の設立時会計参与・監査役・会計監査人の氏名等

 ⑤ 株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社の株主に対して交付する株式移転設立完全親会社株式の数(種類株式発行会社にあっては株式の種類および種類毎の数)またはその数の算定方法並びに株式移転設立完全親会社の資本金および準備金の額に関する事項

 ⑥ 株式移転完全子会社の株主に対する株式の割当てに関する事項

 ⑦ 株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社の株主に対して株式移転設立完全親会社の社債等を交付するときは、次に掲げる事項

イ 株式移転設立完全親会社の社債であるときは、当該社債の種類および種類毎の各社債の金額の合計額又はその算定方法

ロ 株式移転設立完全親会社の新株予約権であるときは、当該新株予約権の内容および数またはその算定方法

ハ 株式移転設立完全親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項および当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項

 ⑧ 株式移転完全子会社の株主に対する社債等の割当てに関する事項

 ⑨ 株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付するときは次に掲げる事項

イ 株式移転設立完全親会社の新株予約権の交付を受ける株式移転完全子会社の新株予約権者の有する新株予約権(株式移転計画新株予約権)の内容

ロ 株式移転計画新株予約権の新株予約権者に交付される株式移転設立完全親会社の新株予約権の内容および数またはその算定方法

ハ 株式移転計画新株予約権の新株予約権者に交付される株式移転設立完全親会社の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、株式移転設立完全親会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類および種類毎の各社債の金額の合計額又はその算定方法

 ⑩ ⑨の場合、株式移転計画新株予約権の新株予約権者に対する株式移転設立完全親会社の新株予約権の割当てに関する事項

  

2 株式移転条件

 共同株式移転の場合、株式移転条件は、当事会社の株主にとって重大な関心事です。株式移転条件の相当性については、備置書面等における開示が義務付けられています(M&Aにおける株式移転③ - 株式移転の手続②

 もっとも、株式移転条件の不公正それ自体は株式移転の無効事由とはならないと解されています。ただし、特別利害関係人の議決権行使により著しく不当な株式移転条件が決定されたときは、株式移転承認決議の取消事由となると解されています。株式移転成立後は原則として株式移転の無効事由となります。 

   

3 割当て

 株式移転完全子会社の株主・新株予約権者に対する割当てについては、株主平等原則との関係で機械的に決まります(773条4項)。もっとも、種類株式発行会社の場合には、各種類株式の株主間の割当比率の問題が生じます(773条3項)。すなわち、種類株式の株主に対しては金銭等を交付しないこともできますし、金銭等の交付について種類株式毎に異なる取扱いとすることもできます。

 なお、株式交換と異なり、株式移転の場合は、株式移転設立完全親会社が株式を一切交付しないことはあり得ません。ただし、共同株式移転の場合に、一方の株式移転完全子会社の株主に対してのみ株式を交付しないことも可能です。

  

4 資本及び準備金

 株式移転計画には株式移転完全親会社の資本金及び準備金に関する事項を記載する必要がありますが、資本金等の確定額を記載する必要はなく、会社計算規則52条の規定に従う旨記載することで足ります。 

  

第3 株式移転完全子会社における株式移転計画の株主総会による承認

1 株主総会特別決議

 株式移転完全子会社は、株式移転計画について、効力発生日の前日までに、株主総会の承認を受ける必要があります(804条1項)。承認には特別決議を要します(309条2項12号)。

 当該株主総会の招集通知を書面(電磁的方法)により行う場合、招集通知に議案の概要を記載等しなければなりません(299条4項、298条1項5号、規則63条7号ヨ)。総株主の同意を得て株主総会招集手続を省略すること(300条)、議決権がある株主全員の書面等による同意による株主総会決議の省略(319条1項)も可能です。

 株主総会招集通知と株式買取請求の通知を併せて一つの通知で行うこともできます。

  

 また、書面(電磁的方法)により議決権行使が行われる場合には、株主総会参考書類に、株式移転を行う理由、株式移転計画の内容の概要など後述する備置書面等記載事項の内容の記載も要求されます(301条1項、規則91条)。

  

2 種類株主総会

 株式移転完全子会社の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときはその種類株主による種類株主総会の特別決議が必要となります(322条1項13号、324条2項4号)。定款による排除も可能で、実務上排除している例が多く見受けられます。

  

3 特殊決議等

 株式移転完全子会社の譲渡制限株式でない株式の株主に対し譲渡制限株式等(規則186条)が交付される場合には、株主総会・種類株主総会の特殊決議(議決権のある株主の半数以上かつ議決権の3分の2以上の賛成)が必要となります(804条3項、309条3項3号)。

  

M&Aにおける株式移転① ― 株式移転の意義・特徴

M&Aにおける株式移転③ - 株式移転の手続②

M&Aにおける株式移転④ - 株式移転の手続③

M&Aにおける株式移転⑤ ― 株式移転の効力

M&Aにおける株式移転⑥ ― 株式移転の差止め・無効

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