金融庁と法務省は企業の決算開示に関するルールを見直しました。1年ごとに作成する事業報告書と有価証券報告書(有報)について、同じ情報を伝える項目であれば表記を統一することとされています。投資家にわかりやすい内容に改めると同時に企業の手間を省くことが目的です。3月末までに関連法制の施行規則などを改正し、2018年3月期決算から適用されます。
Ⅰ 経緯
一体的開示については、「日本再興戦略」改訂2015(2015年6月30日閣議決定)において、企業が投資家に対し、必要な情報を効果的かつ効率的に提供するため、金融審議会において統合的な開示の在り方が検討されていました。
この目的は、中長期的な企業価値の向上を促すためには、企業から投資家に対して、投資判断に必要な情報が十分かつ公平に提供され、投資家と企業が建設的な対話をしていくことが必要であるが、その際に、開示業務に対して社内リソースを十分に割くことができない企業にとっても、取り組みやすい開示を実現するという点にあります。
金融審議会は、2015年11月から、企業の情報開示の在り方について検討を続け、2016年4月18日には「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告」が公表されました。
この報告を受けて、さらなる検討が進められる中、2017年6月9日に閣議決定された新たな成長戦略である未来投資戦略2017において、「事業報告書等と有価証券報告書について、異なる制度間で類似・関連する記載内容の共通化が可能な項目に関して必要な制度的手当ておよび法令解釈や共通化の方法の明確化・周知等」につき、2017年12月中に成案を得るものとされていました。
そして同月、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について、政府によって公表がなされました。
今回のルール変更は、上記のような改正審議を踏まえて行われるものです。
Ⅱ 内容
事業報告書は法務省所管の会社法で、有報は金融庁所管の金融商品取引法で規定されています。今は「純資産」と「純資産額」、「従業員の状況」と「使用人の状況」など同じ内容でも違う用語での記載を義務付ける項目が多いことが問題とされています。今回のルール改正で表記をそろえることになりました。
また、大株主の株式所有割合を出す方法も統一します。例えば、事業報告書では発行済み株式総数から自己株式数を差し引いて算定しているが、有価証券報告書では自己株式を引かない方法を採っています。2018年3月期決算からは事業報告書の方法に統一されることになりました。取締役や監査役の報酬総額の記載方法もそろえることになりました。
リンク
経済産業省:「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」を取りまとめました
http://www.meti.go.jp/press/2017/12/20171228003/20171228003.html
金融庁:「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について